プードルに多く見られる病気について
ティーカッププードル研究所
竹内 伸吾
【 はじめに 】
人と同じように犬も病気をすることがあります。ここでは、特にプードルに焦点を絞ってかかりやすい病気をまとめてみましたのでご参考になさってください。
あらかじめご理解いただきたいこととして、スタンダードからトイまで「プードル」という大きな括りでご案内しております。決してティーカッププードルがかかりやすい病気という限定したものではありませんので、その部分はよくご承知おきください。
ちなみに、「ティーカッププードルって病気になりやすいんじゃないの?」「寿命が短いんでしょ?」といったご質問をいただくことがあります。
その答えは、『 NO!』です。
人間で考えてみてください。身体の小さい方は病気がちですか?寿命は短いですか?そんなことはありませんよね。
ティーカッププードルは身体が弱いということは決してありません。
ただし、それはティーカッププードルを長年研究したブリーダーさんのところから産まれた子に限っての話です。
悲しい話ですが、普通のトイプードルを飼育しているブリーダーさんのところから“未熟児”として小さな子が産まれ、それをティーカッププードルと偽って販売しているところもあります。そういった正統のティーカッププードルでない子に関しては、身体が弱く短命になるケースがほとんどです。
愛犬とは十数年のつきあいとなります。信頼できるブリーダーさんを、ご自身の眼でしっかりと見極め、最期まで愛せる子をお迎えください。
【骨・関節】
膝蓋骨脱臼(パテラ)
小型犬種に発生度が高いとされる膝蓋骨脱臼(通称パテラ)は、膝にあるお皿が正常な位置から外れてしまう、もしくはずれてしまう病気です。程度は様々で、足を伸ばしたときだけ外れてすぐに元に戻るという軽いものから、完全に内側に脱臼したままというものあります。
体の内側に向かって外れる「内方脱臼」と外側に向かって外れる「外方脱臼」とがありますが、犬の場合はほとんどが内方脱臼であるといわれています。
原因は大きく分けて、骨折などのケガにより膝蓋骨が衝撃を受けたために起こる後天性のものと、生まれつき大腿骨の膝に近い部位の形が異常で、膝蓋骨を収める十分な深さがないことや、大腿四頭筋腱と頚骨の接合部位の異常などのために起こる先天性のものとがあります。
後天性の場合、激しい痛みや患部の腫れなどが表れます。先天性の場合は、老犬になってから徐々に症状が表れたり、すでに子犬の頃から症状が認められるなど、その犬によって時期はさまざまです。しかし、症状が重くなると膝蓋骨が変形したり、場合によっては歩行困難になることもあります。また、どちらの場合も脚をつこうとしない、スキップするような歩き方をするなど、目に見えて分かる症状がほとんどです。
さらに、一度脱臼してしまうと癖になり、たとえそのときは治ったとしても、何かのきっかけで再度脱臼してしまうこともあるので、お散歩のときなど十分注意をしてあげましょう。フローリングなど滑りやすい床材は避けるなど、生活環境への気配りも大切です。
一般に、症状の重さを四段階に分けて、それに合わせてどのように治療していくか決定されます。軽度であれば安静、痛み止めの内服、軟骨保護剤、そして進行するようであれば手術を考慮するべきでしょう。手術は、関節に様々なダメージが起こってしまい完全に悪化してからではなく、ある程度進行する傾向が認められた段階で決断したほうが手術の成功率は高くなります。
また、肥満である場合には、必ず減量が必要です。膝に限らず、骨や関節の病気では、理想体重よりもさらにもう少し落とした体重を維持することで、痛みなどの症状がかなり改善されます。適切に手術が行われても、肥満が続けば、術後の経過は思わしくありませんし、減量することで、手術をしないで済んだり、鎮痛薬の量を減らせることもあります。
≪膝蓋骨脱臼(パテラ)の四段階の症状≫
グレードⅠ
膝蓋骨の位置は正常。脚を伸縮させて指で押すと脱臼するが、離すと自然に整復される。このレベルでは無症状のことが多いが、時にスキップのような歩行をすることが多い。
グレードⅡ
膝蓋骨の位置は不安定。膝関節を曲げると脱臼したり跛行したりするが、指で膝蓋骨を整復することができる。このレベルでは数年間、日常生活に支障はないが、様々な症状を呈しながら骨の変形が進み、膝蓋骨を支える靭帯が伸びてしまう。
グレードⅢ
常に脱臼している状態。指で押せば整復可能だが、すぐに脱臼してしまう。多くの場合は、膝関節を屈曲させたまま歩行するので、顕著な跛行が見られる。大腿骨や頚骨の変形も明らかになる。
グレードⅣ
常に脱臼している状態。指での整復は不可能。大腿骨や頚骨の変形が重度となり、うずくまった姿勢で歩行するか、前肢に体重を乗せ、痛んだ肢を浮かせたように歩行する。
【眼】
白内障
眼の水晶体が白く濁ってしまう病気で、白濁によって視力が低下し、最終的には失明してしまいます。
原因は先天性のケースもありますし、6歳以上であれば老齢牲白内障の場合もあります。このほかにも事故などによる外傷、中毒、糖尿病などが原因で引き起こされることもあります。軽度の場合は、点眼薬などで進行を遅らせることはできますが、完治することはほとんどありません。なお、人間同様、水晶体を取り除いて人工レンズを入れることによる治療もあります。
流涙症
特に長毛種の犬で目立つのが、目の内側から下の部分の被毛を茶色に変色させる流涙症です。涙は眼瞼で作られて目の表面を覆い、異物を流しだしたり、まばたきをスムーズにしたり、酸素や抗体を角膜に供給するなどの役割があります。余分な涙は目頭にある涙点という穴から鼻涙管に入り、鼻腔中に流れるのですが、この涙の流れに問題が起こると流涙症になります。鼻涙管が詰まることで余分な涙が鼻腔内に流れず、目からこぼれて落ちてしますのです。
放っておくと結膜炎を起こしてしまうこともありますので、目やにや涙が多くなった、白目が充血するようになったなどの症状が出たら早めに動物病院にお連れください。
異所性睫毛
まつ毛の生え方に異常がある病気です。正常な場所以外から生えることにより、角膜を刺激して目やにや涙が出やすくなったり、ひどい場合には角膜腫瘍や色素沈着を引き起こしたりします。
治療としては、異常なまつ毛を抜くことで対処します。ただ、何回か抜くと生えてこなくなることもありますが、多くは同じ場所から繰り返し生えてくるので、定期的に抜くことが必要です。外科的に毛根を凍結させて永久脱毛する処置方法もあります。
【呼吸器】
気管虚脱症
気道を形作っている気管の一部が扁平になり、気道をふさいでしまう病気です。特徴はガチョウの鳴き声のような咳をすることです。気管のほとんどがふさがれてしまうほど重度になると、非常に苦しい呼吸困難を起こします。
診断は、頚部と腹部のレントゲン検査や、わかりにくい場合は、透視検査や気管・気管支鏡検査によって行われます。投薬による内科療法や、体重の減量、軟口蓋長い場合にはその切除などが行われますが、最終的には手術が選択されることもあります。
【神経系】
水頭症
脳室に脳脊髄液が多量に貯留してしまい、歩行時のふらつき、運動障害、てんかん発作などの神経症状が出る場合があります。また、水頭症の場合、これらの症状のほかに、性行動に変化が見られたり、異常に攻撃的になったりもします。触診でわかることもありますが、通常はX線検査や超音波診断(MRI、CT)で診断します。
最近では、これらの病気を持っていたとしても、神経症状が出なければ、病気とはとらえないという考え方が一般的になりつつあります。しかし、日常生活においては、テーブルなどの低い家具にはクッションテープを貼るなどして、衝撃を少なくしてあげる配慮も大切です。
歯突起形成不全
背骨の第2頚椎にある「歯突起」は、靭帯や筋肉と共に頭骨と頚椎との連結を強固にしている骨。これが生まれつき欠損していたり、事故に遭って折れていたりすると首の状態が不安定になります。すると、背骨内の脊髄が椎骨によって圧迫されてしまい、脊髄に出血や炎症が起こって痛みを伴ったり、ひどくなると四肢や全身の麻痺が発生します。
治療は、第1頚椎と第2頚椎を特殊な針金で補強する外科手術を行います。
椎間板ヘルニア
激しい運動や骨の老化、肥満などにより、頭部や胴体を支えてクッションの役割を果たす椎間板が損傷すると、神経を圧迫して痛みや神経麻痺を伴います。足を引きずる、段差の昇り降りを嫌がる、背骨を触ると痛がる、ふらつくなどの症状が表れたら、この病気を疑ってみてください。長く放っておくと、いずれは半身不随になる恐れもあります。
症状が比較的軽度のうちは、ステロイド剤などの消炎剤で患部の炎症を取り除く内科的治療を行います。神経麻痺や足が動かないなどの重度の場合は、患部を特定して外科手術を行い、術後はリハビリによって神経の機能回復を図ります。
椎間板ヘルニアが心配される犬種では、フローリングなど滑りやすい床材にはカーペットを敷き、段差のある昇り降りをさせない、激しい運動を避ける、食事管理による肥満防止などの配慮が必要です。
【生殖器】
潜伏睾丸
おそらく遺伝によって発生することがわかっています。犬の場合は、生後約7週間で陰嚢に精巣が降りてきます。多少の個体差を考慮したとしても、生後数ヶ月経っても陰嚢に精巣が降りてこない場合には、この病気を疑ってみてください。
睾丸が潜伏している部位は、腹腔内か鼠蹊部がほとんどであり、両側よりも片側のことが多いようです。様々な小型犬で発生していますが、もちろんトイプードルもそれに含まれます。腹腔内または鼠蹊部に留まっている精巣は、そのままにしておくと腫瘍化する確率が高くなるということは有名です。潜伏睾丸であることがわかった段階で、虚勢手術をすることをお勧めいたします。その場合、必ず両方の精巣を摘出することが必要です。
【その他】
外耳炎
耳の外耳道が炎症を起こすもので、犬の中では一番多いとされる耳の疾病です。耳をかゆがったり、耳を振るなどの動作が見られるため、比較的発見しやすい病気です。
原因としては、被毛や耳垢などの掃除のときに耳道を傷つけたり、外部寄生虫、耳の中の細菌およびカビや、過度の湿気が挙げられます。
急性の場合には、耳から黒あるいは茶褐色の悪臭のある分泌物が排出されます。早期に治療すれば完治できるので、症状が見られたらすぐに動物病院に連れて行きましょう。
乳歯遺残症
永久歯が生え揃っても、まだ乳歯が残ってしまうことがあります。トイプードルなどの小型犬種では、特に犬歯が残ってしまうことが多いようです。一般には、乳歯は6ヶ月齢前後で抜けてしまいますので、その時点で残っている場合には、永久的に残ると考えてよいでしょう。
乳歯が残ってしまうと、永久歯の歯並びに影響するだけでなく、永久歯との間に汚れが溜まり、歯周炎を招きます。ですから、残っている乳歯は、まだ歯肉が柔らかいうちに抜歯してもらうことをお勧めします。特に犬歯の根は非常に長くて深いので、何年も経過すると抜歯することがとても難しくなります。
低血糖症
一般的に「低血糖」と呼ばれる病気です。急に元気が無くなり、倒れたり、心臓発作を起こしたりすることがあり、小型犬種に多く見られます。
子犬時に発生することが多く、血液中の糖分の濃度が著しく低下するために、痙攣を起こしたり、ぐったりとしてしまいます。新生児の低血糖は3ヶ月までの子犬に起こりやすいのが特徴です。
原因は主に空腹や下痢などの胃腸障害です。家庭でできる対処法は、ぐったりとしたらすぐに砂糖水や蜂蜜などを口に含ませること。これだけでもかなり効果的です。
【ウイルス感染症について】
感染症を予防する「ワクチン接種」
「ワクチン」は、外部から侵入してくる細菌やウイルスから身体を守る免疫システムを体内に作り出すというものです。それぞれの犬によって、免疫の抗体価がどれぐらいの期間保持されるかは違ってきますが、年に1回、毎年の接種を行うのがベストでしょう。ワクチン接種の際には、全身の健康チェックも行いますから、健康診断と病気予防のつもりで、定期的なワクチン接種を心がけましょう。
下記に挙げる感染症は、ワクチン接種により防げる代表的なウイルス感染症です。
◆犬パルボウイルス
下痢、嘔吐、発熱、脱水症状などを起こす腸炎型と、急性心不全となる心筋炎型とがあり、日本では、ほとんどが前者のタイプで発症しています。1980年頃から急速に広まった感染症で、死亡率が高い重大な病気です。
◆犬ジステンパー
発熱、目やに、咳、くしゃみなどの呼吸器症状、あるいは下痢・嘔吐などの消火器症状が表れます。1ヶ月以上を経過すると、痙攣などの神経症状が出ることもあります。伝染性が強く、経口、経鼻、経飛沫感染にて感染します。細菌感染を併発していることが多く、症状を悪化させる原因となっており、死亡率も高い病気です。
◆犬レプトスピラ
レプトスピラ(細菌)が原因で起こる病気です。感染すると腎炎が起こり、尿毒症になり、嘔吐、下痢、血便などの症状が見られるようになります。更に症状が進むと、肝障害や腎障害を起こし、黄疸、痙攣、昏睡、血便などの症状が表れます。レプトスピラは水のあるところでは長く生きるため、小さな池や下水、よどんだ川に犬が入ると、粘膜や傷のある皮膚を通して感染する恐れがあります。
◆犬コロナウイルス
下痢、嘔吐などの消火器症状を表す感染症です。犬コロナウイルスだけの単体感染では比較的軽症で済みますが、犬パルボウイルスとの混合感染が多く、その場合は症状も重くなり死亡率も高まります。ジステンパーと共に犬に多く発生する感染症とされています。
◆犬伝染性肝炎
アデノウイルス1型の経口感染によって発症する病気です。肝炎が急速に進行し、子犬が感染すると数日で死亡してしまいます。成犬では発熱、下痢、嘔吐が表れます。感染した犬の尿、便、食器などを介して感染します。
◆ケンネルコフ
気温の変化が激しい季節に見られる病気で、アデノウイルスなどのウイルスが気管に感染し、そこに細菌が二次的に合併感染して激しい咳を伴います。症状としては、ただ咳をする場合と、食欲不振、元気消失となってしまうケースとがあり、これに合併症が加わって死亡するケースもあります。
【ワクチンの副作用とその対策】
頻繁に起こるものではないものの、ワクチンには副作用があることを知っておいてください。ワクチンによって細菌やウイルスの病原体が体内に入るわけですから、犬によっては副作用が出ることもあります。顔が腫れ上がったり、熱を出したり、元気が出なくなったり、お腹をこわしたりといったようなもので、これらの症状はワクチンに対するアレルギー反応とみられます。そこで、ワクチン接種の際には次のようなことに注意するようにしましょう。
1、愛犬の体調が悪いときには接種しない。
2、ワクチンはなるべく午前中に済ませ、その日はできる限り愛犬と共に過ごす。何かあったらすぐに動物
病院に連絡を。
3、接種直後がもっとも危険な副作用(ショック症状など)が表れやすいので、病院の待合室もしくは車内
で1時間ほど休ませてから帰宅する。
4、ワクチン接種後は激しい運動は避け、シャンプーも数日間控える。
【狂犬病】
未だに世界中に分布する人獣共通感染症で、一度発生すると100%死亡する恐ろしい病気。日本では1956年を最後に発生していませんが、狂犬病ウイルスが野生動物を宿主としているために、海外では今なお発生が続いています。(日本を除きオーストラリアが唯一の非汚染地域)。
感染した動物や犬に噛まれると、狂犬病ウイルスは末梢神経を伝わって中枢神経へと拡散します。この速度が遅いため潜伏期間が長く、感染を疑われた後に免疫注射をしても発病阻止に十分な効果が期待できます。万全の防疫対策が必要との判断から、日本では1950年に予防接種を義務付ける「狂犬病予防法」を制定。それ以前からの病気根絶の取り組みと法制定により、国内では1956年を最後に狂犬病は発生していません。
とはいえ、海外で感染して国内で死亡した例が近年もあったり、感染した野生動物が国内にもたらされる可能性も無いとは言えないため、年に1度の狂犬病予防接種は愛犬家の義務としてぜひ忘れないでください。